福岡県大任町(おおとうまち)の永原譲二町長が、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を掲げ、10月20日に県へ国への申請を求めました。けれど法律上、国に申請できるのは県などで、町にはできません。決める立場の服部誠太郎知事は、国が申請を受け付ける来年5月からの半年で事業者選びまで終えるのは、大阪などの例から「なかなか今までの事例から言うと難しい」と述べています。

町長が説明会で約束したこと

大任町は、人口4766人(2025年国勢調査の速報値)の町です。筑豊経済新聞によると、町議会は9月16日に誘致を全会一致で議決しました。FBSによると、9月30日夜の住民説明会には町民や周辺の住民などおよそ1000人が集まり、RKBによると永原町長はそこで、建設時に1兆円前後、運営時におよそ6500億円の経済効果が見込めると説明しています。

FBSによると、町長は「1年間で最低1300万人を想定しています」と話し、客の中心を海外の富裕層と見込みました。依存症の心配には日本人の入場回数の制限を挙げ、「言っても3日までやから、依存症にはならない」と答えています(RKB)。わたしは、回数に上限があることと依存症にならないことは別の話だと思います。RKBは、韓国人の入場を月に15日までに制限している江原ランドでも、依存症が問題になっていたと伝えています。

RKBによると、町長は同じ説明会で「依存症たくさん出たら腹切って辞めます。県議会の議決を取る流れについては我々も政治家が政治力でお願いをして何とかお願いしたい。もし私の政治力がなければボツ、夢は終わります」と述べました。けれど依存症になった人の借金や家族の暮らしは、町長が辞めても元には戻りません。

依存症たくさん出たら腹切って辞めます。県議会の議決を取る流れについては我々も政治家が政治力でお願いをして何とかお願いしたい。もし私の政治力がなければボツ、夢は終わります

永原譲二福岡県大任町長2026年9月30日の発言(動画:RKB毎日放送NEWS)発言の記録YouTube で見る

国に申請できるのは県だけ

申請までの5段階:町の議決と要望、県の実施方針と事業者選び、県議会の議決と町の同意、国への申請(2027年5月6日〜11月5日)、国の認定(全国3つまで)。町が決められるのは最初の段階まで
申請までの道。出典:IR整備法(e-Gov)、政令、観光庁、福岡県知事会見録
高い「都道府県」の申請窓口に、小さな町が届かない様子を描いたイメージ
町は国に申請できず、申請するのは県。出典:編集部作成(イメージ)

IR整備法は、区域整備計画をつくって国の認定を申請できるのを「都道府県等」としています(9条1項)。県が申請するには県議会の議決が要り(9条8項)、場所となる町の同意も先に得なければなりません(9条9項)。町が自分で国に申し込む道は、この法律にはありません。

国が認める区域は、全国で3つまでです(9条11項7号)。観光庁によると、大阪の計画は2023年4月14日に認定され、長崎の計画は2023年12月27日付で認定されませんでした。次の申請期間は、政令で2027年5月6日から11月5日までと決まっています。

町長は10月20日に県庁を訪れて要望書を出し、RKBによると「もう枠は2枠しかないですから、(来年)11月までに他の都道府県から(申請が)出ればもう終わりですよね」と話しました。毎日新聞によると「県が意思決定してくれなければ事が動かない」とも述べています。TVQによると「今現在は、ボールを県に投げました。あとは、県の意向で進むと思います」とも話しています。

知事は「極めて慎重に」

服部知事は10月20日の定例会見で「IRを否定するわけにはいかない」と述べ、「その副作用についても、十分に注意する必要があると思っております」と続けました。県内に「約5万8,000人いらっしゃるというデータ、調査もあります」とも挙げています。これは久里浜医療センターの2023年度の調査で依存が疑われた人の割合1.7%を、18〜74歳の県人口に当てはめた推計です。

IR事業が成功すれば、確かに経済あるいは雇用の面において効果をもたらすと考えられます。しかし一方で、その副作用についても、十分に注意する必要があると思っております。

服部誠太郎福岡県知事2026年10月20日の発言(動画:RKB毎日放送NEWS)発言の記録YouTube で見る

知事は、県にはこれまでIRの話がなく「担当課にも担当職員がいません。」と明かしました。大阪でさえ実施方針を定めるまでに4年以上かかったと振り返り、来年5月からの半年で事業者の公募や選定まで終えるのは「極めて、なかなか今までの事例から言うと難しいなと思っています。」と述べています。

知事の結論は「プラス、マイナスの両面から、極めて慎重に検討する必要があると考えています」でした。町長は12月の県議会で同意を得て、来年11月5日までに申請することを目指しています(RKB)。一方の知事は、今の段階では検討の体制も考えておらず「まずはIRの担当職員を明確にしなければいけないなと思っています。」と述べています。

図1 町長が挙げる数字と、知事が挙げる数字
数字誰が・どこで
経済効果(建設時)1兆円前後永原町長・9月30日の住民説明会(RKB)
経済効果(運営時)およそ6500億円永原町長・同(RKB)
来場者1年間で最低1300万人永原町長・同(FBS)
実現の可能性51%永原町長・10月6日の会見(RKB)
依存が疑われる人(県内)約5万8000人(推計)服部知事・10月20日の会見(県の計画の推計)
実施方針までの年数(大阪)4年以上服部知事・同(県の会見録)

依存症の当事者団体は反対

FBSによると、ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表は10月19日に会見を開き、町長と知事に要望書を送るとしました。田中代表は「ギャンブル依存症に全く理解のない町がカジノに手を挙げ、IR誘致が実現することはあってはならない」と述べています。TVQによると「富裕層であろうが貧しい家庭であろうが、ギャンブル依存症はギャンブルをやる人であったら平等に発症します」とも話しました。

町長は10月6日の会見で「(実現可能性は)51%です」と述べました(RKB)。FBSによると、町の計画は7000億円から9000億円の民間資金が前提ですが、町長は調達について「私にも分かりません」と述べ、集めるのは業者で公募は県だと説明しています。依存症では国の入場制限を、資金では事業者と県を挙げ、町長の答えはどちらも町の外にいる誰かを指しています。

日本の読者にとって

大任町のカジノ構想が動くかどうかを決めるのは、町ではなく県と県議会です。政令が定める次の申請期間は、来年11月5日に終わります。わたしが次に見たいのは、日程案で12月1日に開く県議会の議場で、この話を誰が最初に口にするかです。

IRの候補地と各地の段階

図2 IRの候補地と各地の段階
自治体段階候補地次の節目
愛知県事業者公募中中部国際空港島(常滑市、約50ha)2026年度冬ごろまで事業者との競争的対話を行い、提案審査書類の提出期限は2027年3月23日。
北海道検討中未特定(2026年の意向調査で苫小牧市と函館市が関心を表明)改訂を決める時期と、申請するかどうかの判断時期は示していない。
東京都検討中(申請の表明なし)未公表未発表
和歌山県表明なし和歌山マリーナシティ(2022年の計画は県議会で否決)未発表
長崎県(大村市)民間で検討中(県は表明なし)大村市・大村湾周辺2026年度中に基本構想をまとめ、2027年11月までに県への提案と国への申請をめざすとしている。
横浜市撤退山下ふ頭なし

よくある質問

大阪の次にIRができる可能性はありますか?

IR整備法で認められる区域は最大3か所で、残りは2枠です。国は2027年5月6日から11月5日まで、2回目の区域整備計画の申請を受け付けます。申請できるのは都道府県または政令指定都市で、民間の事業者と共同で計画を作ります。

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