大阪府と市が11月5日に示した都構想の財政試算は、カジノを含むリゾート(IR)から入るお金を、決まっていない額をひとまず置く「仮置き」で入れている。その額は毎年500億円だ。4つの特別区を合わせた黒字は、最も小さい年にはこの額を下回る。維新は来春の住民投票を目指していて、その前に示された特別区の財政の数字がこれだ。
試算は1年目から500億円を入れた
法定協は、大阪市をなくして4つの特別区に分ける案を詰める、府と市の協議会だよ。11月5日の会合に、副首都推進局が特別区のお金の試算を出した。
資料は、特別区ができる日を2031年1月と仮定している。そこから10年間、入るお金と出るお金を並べた試算だ。
入るお金の欄に「IR納付金等」という行がある。資料は、特別区の分を年500億円と「仮置き」して、人口で各区に分けた。
仮置きは、まだ決まっていないけれど、ひとまず入れておく数字のことだよね。その額は、表の最初の年から最後の年まで変わらない。同じ行には、決算の改善分として年150億円も足してある。
黒字が最も小さい年は492億円
図1 4特別区合計の収支差(億円、年度別)と、歳入に毎年入れたIR納付金等500億円(仮置き)。出典:大阪市 副首都推進局「財政シミュレーション」(第12回 大都市制度協議会 資料1、2026年11月5日)4つの特別区を合わせた黒字は、2031年度が666億円で始まる。いちばん小さいのは2037年度の492億円で、その前の年も494億円だった。最後の2040年度には、818億円まで伸びるとされた。
わたしが表でいちばん長く眺めたのは、この2つの年。黒字の額が、同じ年に入れたIRの仮置きの額を下回っているから。
報道では「毎年度約500億円の黒字」とも伝えられた。表の数字をそのまま読むと、500億円に届かない年が2つある。
資料自身も、一定の前提のもとに行った粗い試算で、相当の幅をもって見る必要があると書いている。
IRの計画では「開業3年目」の数字
図2 都構想の試算とIRの計画を同じ年の目盛りに置いた。出典:大阪市 副首都推進局 資料1(2026年11月5日)、大阪府・大阪市・MGM大阪「大阪・夢洲地区IR区域整備計画の概要」(2026年7月31日)、産経新聞(2026年11月5日)500億円の出どころは、夢洲のIRだ。法律では、カジノの事業者が毎月のカジノの売上(粗収益)の15%を、府と市の分として国を通じて納める。日本人と日本に住む外国人がカジノに入るときの入場料も、3,000円が府と市に入る。
大阪IRの計画の概要は、納付金と入場料で府と市に年約1,060億円が入ると見込む。府と市で約530億円ずつ分ける計画だ。
ただ、計画の数字は、断りがない限り「開業3年目期」のものだよね。開業は2030年秋頃で、それも工程が最も早く進んだ場合の想定。計画自身が、工程は1〜2年程度「後ろ倒しとなる」こともあると書いている。
試算が始まる2031年度は、最も早い工程でも、開業の翌年度にあたる。仮置きの500億円は、その年から満額で並ぶ。
知事は「IRに依存しているわけでは全然ない」
吉村洋文知事は法定協の後、記者団に「IRに依存しているわけでは全然ない」と反論したと、共同通信が伝えた。
試算は、国の成長戦略が実現する場合を採用し、名目成長率を3%前後とした。IRのほかに、この前提も黒字の大きさを左右する、とわたしは読む。
横山英幸市長も「実態に即した形のシミュレーションが作成されたと認識している」と評価した。
ABCニュースは、都構想に反対する会派から「誤魔化しの黒字をアピールしているだけ」という声が上がっていると伝えた。
国の審査委員会は2023年、大阪IRの来訪者数などの推計値に「意欲的な数字となっている面が見受けられる」と書いた。
10月に公表された評価書でも、推計の前提条件に変更がないことの確認に留まっている、と書いている。
次は11月10日の法定協
会合では委員から、大阪市が残る場合の収支も試算して比べるべきだという意見が出て、継続協議になった。
産経新聞によると、次の法定協は11月10日に開かれ、特別区を置く日などを話し合う。維新は12月上旬までに協定書案をまとめ、来春の統一地方選と同じ日の住民投票を目指している。
わたしが次に開くのは、10日の会合の資料。市が残る場合の欄が並んでいるかどうかから見ていく。
日本の読者にとって
大阪市民にとって、この試算は住民投票の前に示された、特別区のお金の試算だ。IRの納付金は法律でカジノの売上(粗収益)の15%と決まっていて、試算の500億円は、IRから入るお金を仮に置いた額になっている。
大阪IRが着工までに越えた手続き
大阪IRが着工までに越えた手続き
- 事業者を公募する2019年12月24日、大阪府・市が夢洲のIRを運営する事業者の公募を始めた。
- 事業者を選び、協定を結ぶ2021年9月28日にMGMとオリックスのグループを選び、2022年2月15日に基本協定を結んだ。
- 国に計画を申請する2022年4月27日、区域整備計画の認定申請が国に受け付けられた。
- 国が条件付きで認定する2023年4月14日、国土交通大臣が7つの条件を付けて認定した。
- 実施協定を結ぶ2023年9月28日に調印。事業者は2026年9月末まで協定を解除できた。
- 解除権が消え、着工する解除権は2024年9月6日付で失効し、2025年4月24日に起工式が開かれた。
大阪府・市と国の発表による(2026年10月時点)。
国が認定に付けた条件(抜粋)
大阪IRの初期投資額の移り変わり
大阪IRの初期投資額の移り変わり
- 約1兆800億円2022年4月の認定申請のとき
- 約1兆2,700億円2023年9月の見直し(建設資材価格の高騰)
- 約1兆5,130億円2025年9月の見直し
よくある質問
大阪IRはいつ開業しますか?
事業者は2030年秋ごろの開業を目指しています。工事は2025年4月に夢洲で始まりました。
大阪の次にIRができる可能性はありますか?
IR整備法で認められる区域は最大3か所で、残りは2枠です。国は2027年5月6日から11月5日まで、2回目の区域整備計画の申請を受け付けます。申請できるのは都道府県または政令指定都市で、民間の事業者と共同で計画を作ります。
日本人も大阪IRのカジノに入れますか?
入れますが、入場料が1回6,000円かかり、7日間で3回、28日間で10回までに制限されます。入場の際はマイナンバーカードで本人確認をします。本人や家族の申し出による利用制限の仕組みもあります。
オンラインカジノは大阪IRと関係がありますか?
関係ありません。日本で認められるカジノはIRの中の施設だけで、日本国内からオンラインカジノで賭けることは、運営会社が海外のライセンスを持っていても賭博罪にあたります。
関連ページ
この記事にコメントする(1人1件まで)