オンラインカジノのサイトは、通信会社がサイトを見られなくする「遮断」の対象になっていません。総務省の検討会は7月の報告書で、遮断するなら法律の裏付けが要るとしました。遮断されていなくても、日本から接続して賭ければ犯罪です。カジノとは違い、情報流出の脅迫サイトについては、総務省が10月27日、その日のうちに遮断を求めています。

流出サイトには、その日のうちに要請

10月27日、GMOインターネットの関連サービスから流出したとされる個人情報が、攻撃者のサイトに載りました。総務省は同じ日付で、電気通信事業者協会など通信の四つの業界団体に文書で遮断を求めました。

ここでいう遮断(ブロッキング)は、通信会社が特定のサイトを利用者に見られなくすることです。総務省が挙げた理由は「二次被害が拡大する現実的な恐れが生じている」ことでした。

サイトはその後、見られない状態になりました。日本経済新聞は、遮断は結果的に発動しなかったもようだと報じています。藤井総務大臣は10月30日の会見で、具体的な対応への回答を控えました。

通信の問題に詳しい森亮二弁護士は朝日新聞に「通信の秘密の侵害を十分に比較衡量したのか、判断が見えない」と話しました。森さんは、カジノのサイトの遮断を話し合ってきた総務省の検討会の一員です。

カジノの遮断は「立法措置」が前提

国内の遮断の4つの場合。児童ポルノは行われている。海賊版サイトは正当化されないとの考え。情報流出の脅迫サイトは10月27日に要請、発動しなかったもよう。オンラインカジノは法律の裏付けが前提
図版:行われている遮断は、児童ポルノだけ(2026年7月の報告書の時点)。出典:総務省「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」報告書、NTTニュースリリース(2018年4月23日)、朝日新聞・日本経済新聞(2026年10月29日)

政府がその気になれば、カジノのサイトもすぐに止められる。そう思う人もいるかもしれません。けれど、総務省の検討会がたどり着いた答えは、そうではありませんでした。

検討会は2025年4月から15回開かれ、2026年7月に報告書をまとめました。報告書は、通信会社が自分たちの判断で遮断するのは「適当でなく、法的担保が必要である」としています。法的担保とは、法律の裏付けのことです。

遮断を行うべき状況にあるといえる場合には「立法措置を講じることが必要である」とも書きました。遮断に踏み切るなら、その前に法律を作る、という順番です。

遮断に踏み切る条件も示しました。権利を制限しないほかの手段を尽くしていること、遮断に効果があること、守られるものと失われるものが釣り合うことです。

報告書の時点で国内で行われている遮断は、児童ポルノを対象にした民間の自主的な取り組みだけです。2018年にNTTの3社が海賊版のサイトの遮断を発表しましたが、報告書は、経済的な利益を守るためだけでは遮断は正当化されないという考えが示されたままだと記しています。

NTT社長は指針と法制化を求めた

要請を受ける通信会社の側にも、迷いがあります。NTTの島田明社長は11月4日の決算説明会で、遮断は「利用者保護」と「通信の秘密」の両方を成り立たせなければならないと述べました。

島田社長は「海賊版の漫画サイトですとか、(オンライン)カジノの話とかは、(ブロッキングによる)対処がなかなか難しいということで来ております」と話しています。

そのうえで「やはり緊急避難のガイドラインの整備ですとか、それから究極的には法制化を進めていただくことが重要だと考えています」と述べました。総務省から要請を受けたか、実際に遮断したかには「ノーコメントです」と答えています。

政府は11月6日、サイバー攻撃への緊急対策を決めました。二次被害を防ぐ策の一つとして、通信会社によるアクセス抑止策の在り方を検討するとしています。

検討会のページに載る会合は、7月22日の第15回が最後です。カジノのサイトの遮断について政府が判断を示したという発表は、11月7日までに編集部が調べた範囲では見つかりませんでした。

  1. 2025年4月23日総務省のオンラインカジノの遮断を話し合う検討会が初会合
  2. 2025年9月25日改正ギャンブル等依存症対策基本法が施行。違法サイトの提示や誘導情報を禁止
  3. 2026年7月22日検討会の第15回。報告書は遮断に法的担保が必要とした
  4. 2026年10月27日総務省が情報流出の脅迫サイトの遮断を通信の業界団体に要請
  5. 2026年11月4日NTT社長がガイドライン整備や法制化を求める
  6. 2026年11月6日政府の緊急対策がアクセス抑止策の在り方の検討を盛り込む
総務省の検討会の始まりから11月6日の政府の緊急対策まで
データを表で見る
図1 カジノは7月の報告書のまま、流出サイトはその日に要請
時期出来事種類
2025年4月23日総務省のオンラインカジノの遮断を話し合う検討会が初会合節目
2025年9月25日改正ギャンブル等依存症対策基本法が施行。違法サイトの提示や誘導情報を禁止節目
2026年7月22日検討会の第15回。報告書は遮断に法的担保が必要とした節目
2026年10月27日総務省が情報流出の脅迫サイトの遮断を通信の業界団体に要請節目
2026年11月4日NTT社長がガイドライン整備や法制化を求める節目
2026年11月6日政府の緊急対策がアクセス抑止策の在り方の検討を盛り込む節目

遮断の前に、入り口を減らす手が動く

違法な誘導情報と分析された2,789件、削除依頼などを出した2,542件、5営業日後に削除を確認できた558件の横棒
図版:削除を確認できたのは558件。2025年9月25日〜12月31日、違法なオンラインギャンブルなどへ誘導する情報。出典:総務省の検討会の報告書(警察庁の確定値)

遮断がないあいだも、カジノへの入り口を減らす取り組みは進んでいます。2025年9月25日に施行された改正法で、違法なサイトを示すことや、誘い込む情報を流すことは禁じられました。

報告書によると、施行から年末までに、違法なオンラインギャンブルなどへ誘導する情報と分析されたものは2,789件ありました。

このうち削除依頼などを出したのは2,542件です。依頼から5営業日後の時点で削除を確認できたのは558件でした。消しても、すぐには消えない入り口が残っています。

違法だという知識も、まだ届ききっていません。報告書に載った調査では、日本国内での利用を違法だと答えた人は6割程度にとどまりました。

検討会の一員で、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんは「オンラインカジノが合法であると回答する大学生が、未だに回答者の4分の1くらいいる」と述べています。森さんは、遮断に踏み切る前に違法性を知らせる取り組みを強めるべきだと述べました。

家族のスマートフォンからは、いまも入り口が見えるかもしれません。それでも、入り口が開いていることと、賭けてよいことは別です。

日本の読者にとって

サイトが見られるかどうかと、罪に問われるかどうかは別の話です。2025年に無店舗型のオンライン賭博で検挙された賭客は196人でした。自分や家族の賭けが止まらないと感じたら、近くの保健所や精神保健福祉センターが相談を受けています。

相談窓口

ギャンブルのことで悩んでいる本人や家族は、住んでいる地域の精神保健福祉センターや保健所に無料で相談できる。依存症対策全国センター(ncasa-japan.jp)が、全国の相談窓口と自助グループを案内している。