ここがポイント
- 2021年6月28日の措置命令は、ガチャを表示どおりの割合で抽選していなかったことが理由だった。
- ガチャが賭博罪に当たるかは事案ごとの判断で、換金できると可能性が高くなるとされる。
小中高生が契約当事者のオンラインゲームの相談は、2022年度に4,024件ありました。契約購入金額の平均は約33万円です。それでも消費者庁のQ&Aは「景品表示法は、消費者の射幸心をあおる行為それ自体を規制するものではありません」と書いています。では、法律はガチャの何を見ているのか。
賭博かどうかは事案ごとに判断される
刑法第185条は、賭博をした人を50万円以下の罰金または科料に処すると定めています。一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは除かれます。賭博とは何かについて、法務省刑事局長だった辻裕教氏は2018年5月25日の国会で、偶然の勝負で財物の得喪を争うことだと答弁しました。
内閣府の消費者委員会は2016年9月20日の意見で、ガチャは賭博の要件のうち偶然性を満たしていると考えられるとしました。実際に賭博罪に当たるかどうかは事案ごとに判断されるとし、得たアイテムを換金する仕組みがある場合などは、その可能性が高くなるとしています。
CESAは2017年4月26日、アイテムを現金で売買するリアルマネートレードを、各社の利用規約で禁止すると定めました。政府は2021年11月19日の答弁書で、刑罰法令に触れる行為があれば捜査当局が法と証拠に基づき対処するとしています。
2012年、コンプガチャはカード合わせとされた
消費者庁は2012年5月18日、決まった組み合わせをそろえると別のアイテムがもらえるコンプガチャは、景品の告示が禁じるカード合わせに当たる場合があるとの見解を出しました。運用基準にもこの例を書き加え、2012年7月1日から景品表示法を執行するとしています。
ふつうのガチャは扱いが違います。消費者庁は、有料のガチャで得るアイテムは景品類に当たらず、景品の規制は及ばないとしています。内閣府大臣政務官だった尾崎正直氏も2023年3月30日の国会で、ガチャ一般は「いわゆる通常の取引活動そのもの」で、一律に規制するのは景品表示法の目的に沿うものではないと答弁しました。
景品表示法から見れば、ガチャはふつうの取引です。この法律が射幸心そのものを相手にしないことは、消費者庁自身が書いています。ガチャの取引を止めるための法律ではない、ということです。私は、法律が見ているのはいくら使うかではなく、ガチャの仕組みと表示だと読んでいます。

業界が決めたのは表示と当たるまでの目安
消費者担当大臣だった河野太郎氏は2016年2月19日の記者会見で、ガチャについて業界や各社の自主的な取り組みを、まず見ていくと述べました。同じ年の4月27日、CESAはガイドラインで、有料ガチャで得られるすべてのアイテムの提供割合を表示することを原則にしています。
日本オンラインゲーム協会のガイドラインは、レアアイテムを得るまでの推定金額を1回分の100倍以内にする、5万円以内にする、提供割合の上限と下限を示す、種別ごとの割合を示す、の四つのうちどれかを守るよう求めています。どれも、利用者が使える額の上限ではありません。当たるまでにいくらかかりそうかの目安と、確率の示し方です。
国が命令を出した例は、表示と中身が違っていたときでした。消費者庁は2021年6月28日、gumiとスクウェア・エニックスに、ゲーム『幻影戦争』のガチャで表示どおりの提供割合で抽選していなかったとして、景品表示法に基づく措置命令を出しています。
韓国は表示を法律に、ブラジルは子どもを線に
ベルギーの賭博委員会は2018年4月の報告書で、三つのゲームの有料ルートボックスは賭博に当たると結論づけました。2023年1月の論文は、ベルギーで売上上位100位のiPhoneゲームの82.0%が、その後もランダム型の有料アイテムで収益を上げていたとしています。経済相は2025年3月26日、禁止は執行が難しいとわかったと議会で答弁しました。
英国政府は2022年7月18日、業界主導の対策を先に求めずに立法するのは「時期尚早」だとして、賭博法を改正しない方針を示しました。表示を義務にした国もあります。中国は2017年5月1日から抽選の確率の公示を義務づけ、韓国も2024年3月22日から確率型アイテムの確率の公開を法律上の義務にしました。
ブラジルの法律は、子どもと青少年に向けたゲームなどでのルートボックスを禁じ、2026年3月17日に施行されました。EUの消費者保護当局のネットワークも2026年9月30日、とりわけ子どもに向けた仕組みに注意を払うとして、ゲーム会社への対応を始めています。つまり、表示の側ではなく、使う人の年齢の側に線を引く国が出てきたということです。
子どもの課金は取り消せる場合もある
ガチャがギャンブルと同じものかどうかも、決着していません。久里浜医療センター院長の樋口進氏は2018年7月3日の国会で、「まだ議論のあるところ」で結論は出ていないと述べました。確率の表示は法律が見ています。
国民生活センターは、民法では未成年者が保護者の同意なく結んだ契約は取り消せるとしています。ただし、子どもが保護者のアカウントでログインしたスマホで課金した場合は、保護者が決済したとみなされる場合もあります。
国民生活センターは、トラブルが起きたら消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センターに相談するよう呼びかけています。2022年度の4,024件の相談も、こうした窓口に寄せられたものです。
日本の読者にとって
日本のゲーム会社にとって、ガチャの線は国の数だけあります。クールジャパン戦略担当大臣の小野田紀美氏は2025年11月26日の国会で、ゲームの海外展開ではガチャを含む各国の「賭博性の評価」があり、一社だけでは対応が困難だという声を承知していると答弁しました。国内で確率の表示を定めているのは、業界団体のガイドラインです。
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相談窓口
ギャンブルのことで悩んでいる本人や家族は、住んでいる地域の精神保健福祉センターや保健所に無料で相談できる。依存症対策全国センター(ncasa-japan.jp)が、全国の相談窓口と自助グループを案内している。
出典
- 刑法(e-Gov法令検索)
- 国会会議録(衆議院法務委員会 2018年5月25日)
- 消費者委員会「スマホゲームに関する消費者問題についての意見」(2016年9月20日)
- 消費者庁「オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について」(2012年5月18日、2016年4月1日一部改定)
- 消費者庁「インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A」
- 国会会議録(衆議院消費者問題に関する特別委員会 2023年3月30日)
- 河野内閣府特命担当大臣 閣議後記者会見要旨(2016年2月19日)
- CESA「ネットワークゲームにおけるランダム型アイテム提供方式運営ガイドライン」(2016年4月27日)
- 日本オンラインゲーム協会「ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン」(2024年6月7日改訂)
- CESA「リアルマネートレード対策ガイドライン」(2017年4月26日)
- 衆議院 答弁書(内閣衆質206第10号、2021年11月19日)
- 消費者庁「株式会社gumi及び株式会社スクウェア・エニックスに対する景品表示法に基づく措置命令について」
- 国会会議録(参議院内閣委員会 2018年7月3日)
- ファミ通.com(日本オンラインゲーム協会の発表を掲載、2026年7月9日)
- 国会会議録(衆議院内閣委員会 2025年11月26日)
- ベルギー賭博委員会「ルートボックスに関する調査報告書」(2018年4月)
- ベルギー下院 経済委員会 議事録(2025年3月26日)
- Leon Y. Xiao「Breaking Ban: Belgium’s Ineffective Gambling Law Regulation of Video Game Loot Boxes」(Collabra: Psychology、2023年1月17日)
- オランダ国務院 発表(2022年3月9日)
- 英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省「ルートボックスに関する意見募集への政府回答」(2022年7月18日)
- 中国文化部「オンラインゲームの運営の規範化に関する通知」(2016年12月1日)
- 韓国 文化体育観光部(大韓民国政策ブリーフィング、2024年3月22日)
- 韓国 公正取引委員会 報道資料(2024年1月3日)
- ブラジル大統領府 法律第15.211号(2025年9月17日)
- オーストラリア政府 閣僚共同発表(2024年9月22日)
- CPCネットワーク「ビデオゲームにおける消費者保護の強化に関する共同声明」(2026年9月30日)
- 国民生活センター「オンラインゲームに関する相談」(2024年3月13日公表)
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