|更新日: 2026年10月13日|読了目安 約15分

ここがポイント

  • 金融庁の局長は2026年4月21日の国会で、「現在金融庁の所管する規制法はございません」と答弁した。
  • ビットバンクは2026年6月15日の注意喚起で、入出金が確認された場合は口座の停止措置を行う場合があるとした。

機密情報を使って賭け、約40万9,881ドルの利益を得たとして米陸軍の兵士を起訴したと、米司法省が2026年4月23日に発表した。賭けた先は予測市場である。日本の金融庁は4月21日の国会で、賭けの対象になるような予測市場について、金融庁の所管する規制法は現在ないと答弁した。国内の暗号資産交換業者は口座を停止する場合があると告知し、米国では10月9日に規則案が公表されている。

機密情報で賭けたとして兵士を起訴

米司法省は2026年4月23日、機密情報を使ってPolymarketで賭けたとして陸軍の兵士を起訴したと発表した。兵士はベネズエラのマドゥロ氏の拘束に関する市場などに約3万3,034ドルを賭け、約40万9,881ドルの利益を得たとされる。米商品先物取引委員会(CFTC)も同じ日、同じ事件で兵士を提訴し、イベント契約をめぐるインサイダー取引で訴追するのは初めてだと説明した。

日本の国会でも、こうした取引所とインサイダー取引は取り上げられていた。金融庁企画市場局長の井上俊剛氏は、起訴の発表より前の4月21日の参議院財政金融委員会で、「昨今のイラン侵攻に関して、そのような取引所を使ってインサイダー取引の疑惑があるというふうな報道もございます」と述べている。

機密情報で賭けたとして起訴された兵士

  • 約3万3,034ドル兵士が賭けたとされる金額
  • 約40万9,881ドル得たとされる利益
  • 2026年4月23日米司法省が起訴を発表し、CFTCも提訴した日

何を売買する市場なのか

KPMGコンサルティングの佐藤憲信氏は2026年6月25日の解説で、予測市場を「選挙や経済、スポーツやエンターテインメントなど、さまざまな領域において、将来発生する事象の結果を予測し、その結果に対応するコントラクトを売買する市場」と説明している。佐藤氏は、「コントラクトの価格は0〜1ドルの範囲で推移し、その価格そのものが、市場参加者が考えるその事象の発生確率を示すと考えられます」とも述べた。

Pew Research Centerの分析によると、予測市場の2社を合わせた月間の出来高は、2025年9月の50億ドル未満から、2026年4月には約240億ドルに増えた。この出来高は1契約を額面の1ドルで数えた想定元本で、実際に支払われた金額ではない。米国の合法スポーツブックの賭け金は、2025年に月平均で約140億ドルだった。

同じ分析によると、2024年7月以降の出来高のうちスポーツが占める割合は、Kalshiで80%、Polymarketで39%だった。証券取引所の親会社が出資を発表した例もある。ニューヨーク証券取引所の親会社インターコンチネンタル取引所は、Polymarketに最大20億ドルを出資すると発表しており、出資前の評価額は約80億ドルとされた。

3つの数字でつかむ

  • 3回金融庁の局長が2026年4月21日の国会で「極めて慎重に対応する必要がある」と述べた回数
  • 約240億ドル2社を合わせた月間の出来高(2026年4月、想定元本)2025年9月は50億ドル未満
  • 80%Kalshiの出来高に占めるスポーツの割合(2024年7月以降)

米国では何が争われているのか

争点は、予測市場を規制する権限が連邦のCFTCにあるのか、州にあるのかである。CFTCは2020年11月4日、予測市場大手のKalshiを指定契約市場に指定した。2022年1月3日には、Polymarketの運営会社に140万ドルの民事制裁金を科し、違反の停止を命じている。

CFTCは複数の州を提訴している。CFTCは2026年4月2日にアリゾナ、コネチカット、イリノイの3州を提訴し、4月28日には、予測市場に対する自らの専属的な管轄権を確認するためとしてウィスコンシン州を提訴したと発表した。同州はその前に、CFTCの規制下にある予測市場5社を州法違反で提訴していた。ミネソタ州では5月18日、予測市場を禁じる規定を含む法案に知事が署名し、CFTCは翌19日に同州を提訴している。

裁判所の判断は分かれている。第3巡回区控訴裁判所は2026年4月6日、Kalshiのスポーツ関連のイベント契約はスワップで、CFTCに専属的な管轄権があるとして、ニュージャージー州に対する仮差し止めを維持した。The Blockによると、第6巡回区控訴裁判所は9月25日、オハイオ州とテネシー州をめぐる訴訟でKalshiの主張を退けた。CFTCは10月9日、スポーツ、政治、文化、天候のイベント契約をスワップの定義に明記する規則案を公表している。

米国では連邦と州が争っているCFTCの発表と裁判所の判断を日付順に並べた。規制公的機関の発表2026年4月2日 CFTCがアリゾナ、コネチカット、イリノイの3州を提訴2026年4月2日CFTCがアリゾナ、コネチカット、イリノイの3州を提訴2026年4月6日 第3巡回区控訴裁判所がKalshiの側に立つ判断2026年4月6日第3巡回区控訴裁判所がKalshiの側に立つ判断2026年4月28日 CFTCがウィスコンシン州を提訴したと発表2026年4月28日CFTCがウィスコンシン州を提訴したと発表2026年5月18日 ミネソタ州で予測市場を禁じる法案に知事が署名2026年5月18日ミネソタ州で予測市場を禁じる法案に知事が署名2026年5月19日 CFTCがミネソタ州を提訴2026年5月19日CFTCがミネソタ州を提訴2026年9月25日 第6巡回区控訴裁判所がKalshiの主張を退ける2026年9月25日第6巡回区控訴裁判所がKalshiの主張を退ける2026年10月9日 CFTCがスワップの定義にイベント契約を明記する規則案2026年10月9日CFTCがスワップの定義にイベント契約を明記する規則案
CFTCの発表と裁判所の判断を日付順に並べた。
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図1 米国では連邦と州が争っている
時期出来事種類
2026年4月2日CFTCがアリゾナ、コネチカット、イリノイの3州を提訴規制
2026年4月6日第3巡回区控訴裁判所がKalshiの側に立つ判断公的機関の発表
2026年4月28日CFTCがウィスコンシン州を提訴したと発表規制
2026年5月18日ミネソタ州で予測市場を禁じる法案に知事が署名規制
2026年5月19日CFTCがミネソタ州を提訴規制
2026年9月25日第6巡回区控訴裁判所がKalshiの主張を退ける公的機関の発表
2026年10月9日CFTCがスワップの定義にイベント契約を明記する規則案規制

欧州の当局と韓国は「賭博」として扱った

ドイツの州共同賭博監督庁は2025年9月5日、Polymarketのような有料の賭けは現行のドイツ法で許可を受けられず違法だと警告した。英国の賭博委員会は2026年2月4日、現行の予測市場の商品は賭博ではない商品に分類できないとの見解を示している。

オランダの賭博庁は2026年2月17日、違法な賭博の提供にあたるとして、Polymarketの運営会社に履行強制金つきの命令を出した。スペインの消費者省は5月、PolymarketとKalshiの2社に対して無免許営業で制裁手続きを始め、暫定措置として国内での両サイトの遮断を命じた。フランスの国家賭博庁は7月16日、国内の接続事業者にPolymarketのサイトへの接続を遮断するよう命じている。

韓国では、利用者が立件されたと報じられている。NADA NEWSによると、韓国の放送メディア通信審議委員会は2026年8月18日にPolymarketへの接続遮断を議決し、韓国警察は9月15日時点で利用者26人を賭博罪で立件した。利用者が賭博罪で立件されたと伝えられた例である。

図2 欧州の当局と韓国は「賭博」として扱った
国日付当局がしたこと
ドイツ2025年9月5日現行法で許可を受けられず違法だと警告
英国2026年2月4日賭博ではない商品に分類できないとの見解
オランダ2026年2月17日違法な賭博の提供にあたるとして、運営会社に履行強制金つきの命令
スペイン2026年5月2社の遮断を暫定措置として命令
フランス2026年7月16日接続事業者に遮断を命令
韓国2026年8月18日接続遮断を議決。警察は9月15日時点で利用者26人を賭博罪で立件

日本の金融庁は何と答えたのか

国会会議録検索システムで2025年1月1日から2026年10月12日までを調べると、「予測市場」という語が出てくる発言は、2026年4月21日の参議院財政金融委員会のものだけだった。この委員会で国民民主党の原田秀一議員は、予測市場を「賭博としてではなく、経済予測、災害ヘッジ、価格発見市場として」活用する考えがあるかを金融庁に質問した。

金融庁企画市場局長の井上俊剛氏は、「いわゆる賭けの対象になるような予測市場については、現在金融庁の所管する規制法はございません」と答弁した。同じ答弁の中で、予測市場で賭ける行為は「賭博と同じではないかといった指摘があること等を踏まえると、極めて慎重に対応する必要がある」と述べている。

井上氏が論点の例に挙げたのは、金商法等の保護法益との関係と、賭博罪との関係である。答弁は「金融庁の所管法令であるところの金商法等の保護法益との関係で対象とすることが正当化されるかとか、あるいは賭博罪との関係とかですね、多くの論点がある」というものだった。井上氏はこの日の委員会で、極めて慎重に対応する必要があると3回述べている。

2026年、日本で起きたこと国会会議録、事業者の告知と文書、報道を日付順に並べた。公的機関の発表節目報道2026年4月21日 金融庁の局長が国会で「現在金融庁の所管する規制法はございません」と答弁2026年4月21日金融庁の局長が国会で「現在金融庁の所管する規制法はございません」と答弁2026年5月10日 この日の時点で、Polymarketの文書の制限対象に日本が入っている2026年5月10日この日の時点で、Polymarketの文書の制限対象に日本が入っている2026年5月22日 Polymarketが2030年までの日本政府の承認を目指すと報じられる2026年5月22日Polymarketが2030年までの日本政府の承認を目指すと報じられる2026年6月15日 ビットバンクが、入出金が確認された口座を停止する場合があると告知2026年6月15日ビットバンクが、入出金が確認された口座を停止する場合があると告知2026年9月17日 自民党の議連会長が10月下旬に勉強会を開く方針と報じられる2026年9月17日自民党の議連会長が10月下旬に勉強会を開く方針と報じられる
国会会議録、事業者の告知と文書、報道を日付順に並べた。
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図3 2026年、日本で起きたこと
時期出来事種類
2026年4月21日金融庁の局長が国会で「現在金融庁の所管する規制法はございません」と答弁公的機関の発表
2026年5月10日この日の時点で、Polymarketの文書の制限対象に日本が入っている節目
2026年5月22日Polymarketが2030年までの日本政府の承認を目指すと報じられる報道
2026年6月15日ビットバンクが、入出金が確認された口座を停止する場合があると告知節目
2026年9月17日自民党の議連会長が10月下旬に勉強会を開く方針と報じられる報道

日本からの利用はどう見られているか

賭博罪については、専門家の見解が公表されている。弁護士の大橋卓生氏は2026年8月15日の解説で、選挙やスポーツなどの結果に金銭や換金可能な価値を投じて利益を得る予測市場は「日本では賭博罪に該当するリスクが高いと考えられます」と述べた。KPMGコンサルティングの佐藤氏も、「日本では、金銭を賭けて将来の事象の結果を予測する行為は、刑法第185条以下に規定される賭博罪に該当する可能性が極めて高いと考えられます」としている。

事業者の側の文書には、日本の記載がある。予測市場大手のPolymarketの開発者向け文書は、2026年10月12日時点で、規制を理由に利用を制限する国・地域の一つに日本を挙げており、制限の理由には賭博と予測市場に関する法律を挙げている。Internet Archiveに保存された同じ文書は、2026年4月21日時点の版には日本がなく、5月10日時点の版には日本がある。

国内では、暗号資産交換業者のビットバンクが2026年6月15日に注意喚起を出した。海外事業者が運営するサービスでも、日本国内からアクセスして金銭的利益を目的に利用する行為は「賭博行為等に該当する可能性があります」という内容である。同社は、予測市場サービスまたは関連性が疑われるサービスとの入出金が確認された場合は口座の停止措置を行う場合があるとした。停止されると、ログイン、暗号資産の入出金、日本円の出金、暗号資産の売買がすべて利用できなくなると説明している。

賭博とは違うという主張と、その論点

予測市場は通常のギャンブルと違うという主張もある。原田氏は4月21日の委員会で、通常のギャンブルは胴元が賭け金から取り分を引くため参加者全体の期待値がマイナスになるのに対し、予測市場は利用者同士が直接取引するため「期待値はゼロサムに近い状態」だと主張した。井上氏は同じ委員会で、取引所と称するところで行われていることに「第三者の検証が入っているかどうかというところもはっきりしない」と述べている。

弁護士の大橋氏は8月15日の解説で、「Polymarket型の予測市場を直接判断した日本の公表裁判例や、金融庁・法務省・警察庁による包括的な公式見解は確認できません」とした。「暗号資産を使えば、賭博罪の問題が消えるのではなく、資金決済法等の論点が追加されます」とも述べている。参加者が何ら財産的価値を失わない仕組みであれば、賭博罪のリスクは大きく下がるともした。

金融の取引と賭博罪の関係は、1999年の時点でも論点として整理されていた。金融法委員会は1999年11月の論点整理で、金融デリバティブ取引に賭博罪が適用されるかどうかについて「依然として法的不確実性が存在する」とし、立法的な手当てが望まれるとしていた。

議連が検討テーマに、事業者は承認目指すと報道

CoinDeskは2026年5月22日、Polymarketが日本事業の代表を起用し、2030年までに日本政府の承認を得ることを目指しているとブルームバーグの報道を引いて伝えた。NADA NEWSは9月15日、自民党のデジタル先端金融議員連盟が予測市場の扱いを検討テーマにすると報じ、党関係者の話として「制度化に向けた本格的な検討に入る前段階」と伝えている。

NADA NEWSは同月17日、議連の会長の平将明衆議院議員が、米予測市場大手Kalshiの幹部の10月下旬の来日に合わせて議連で勉強会を開く方針を示したと報じた。米国ではCFTCが10月9日に規則案を公表している。日本では、賭けの対象になるような予測市場について、金融庁の所管する規制法は現在ないというのが4月21日の答弁である。

図4 同じ「予測市場」でも、日米で扱いが違う
米国日本
所管CFTCが専属的な管轄権を主張金融庁の所管する規制法はない
争点州が事業者を提訴し、CFTCが州を提訴。控訴裁判所の判断は割れている賭博と同じではないかという指摘
直近の動き2026年10月9日、スワップの定義に明記する規則案2026年4月21日、国会で答弁

出来高に占めるスポーツの割合

出来高に占めるスポーツの割合2024年7月以降の出来高に占めるスポーツの割合(%)。Pew Research Centerの分析。KalshiKalshi 80%80%PolymarketPolymarket 39%39%
2024年7月以降の出来高に占めるスポーツの割合(%)。Pew Research Centerの分析。
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図5 出来高に占めるスポーツの割合
項目スポーツの割合
Kalshi80%
Polymarket39%

日本の読者にとって

金融庁は、賭けの対象になるような予測市場について、金融庁の所管する規制法は現在ないと答弁し、極めて慎重に対応する必要があるとしている。ビットバンクは、日本国内から金銭的利益を目的に利用する行為は「賭博行為等に該当する可能性があります」とし、口座の停止措置を行う場合があると告知した。違法なオンラインギャンブルへ誘導する情報の発信は、ギャンブル等依存症対策基本法の第9条の2で禁じられている。

読者のみなさんへ

出来事の結果を売買する市場を、日本は金融として認めるべきだと思いますか? それとも賭博として扱うべきですか?

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出典

この記事の作り方

この記事は、読者がよく検索している疑問と当サイトのデータをもとに編集部が企画し、出典に挙げた公式の発表と当サイトの記事、その元の報道だけを根拠に書いたものです。かぎかっこで引いた発言は元の報道にあるもので、発言者を添えています。事実は機械と別のAIが一文ずつ確かめ、編集長役のAIの基準に届いたものだけを公開しています。ギャンブルを勧めるものではありません。