予測市場が社会に根付くほど規制は難しくなると、Roosevelt Instituteが「経路依存」を挙げて警告した

予測市場が主流に溶け込むほど、この新興産業を規制することは難しくなり、規制しようという政治的な意欲も薄れていく。

これは、勝ち負けを一発で決める取引所(オールオアナッシング型の交換所)に批判的な進歩派シンクタンク、Roosevelt Instituteの見立てだ。同研究所は予測市場の台頭とそれに伴いうる負の側面を検証する連載の一環として、この産業が米国の日常を支える3つの柱、すなわち金融サービス機関、メディア、プロスポーツリーグに浸透しつつある様子を、「経路依存(path dependence)理論」に着目して分析した。

イエス/ノー型の取引所に関して言えば、企業やリーグが今日行っていることは無害に見えても、将来より大きな帰結をもたらし、時間とともに後戻りが難しくなりうる、と経路依存理論は説く。

「別の経路――何か別のやり方――に切り替える費用は、その経路を進むほど大きくなる。その経路の収益逓増が自己強化を始めるからだ」と同研究所は指摘する。「正のフィードバックの循環が生まれ、制度や事業の初期に下された決定が次第に固定化される。その結果、大規模な変更はいっそう実行しにくくなる」

言い換えれば、予測市場が世の中の空気に組み込まれるほど、機関や政策当局、規制当局が方向を転換するのは難しくなる、ということだ。

金融・メディアでの予測市場「ゴールドラッシュ」

急拡大の中で、予測市場の事業者は提携を通じて主流メディアでの存在感を高め、旧来の金融サービス業界にも食い込みつつある。

Roosevelt Instituteは、S&P500のコミュニケーションサービスと金融サービスの両セクターで最大手企業を調べ、前者ではすでに5社が予測市場と提携していると指摘した。この5社にはFacebookの親会社Meta Platformsが含まれ、同社は独自のイエス/ノー型取引所を開発中とうわさされている。

金融サービスの大手20社では、事業者への出資を通じて予測市場に関与しているのはMorgan Stanleyのみだ。ただし他の機関も参入を検討しており、上位20社の外側にも予測市場にしっかりと足を踏み入れている金融企業は多い。

Roosevelt Instituteは、メディアが予測市場を受け入れることで取引所が正常なものとして受け止められつつあり、規制がなければ金融サービス企業もイベント契約(事象を対象にした契約)分野に関心を示し続ける公算が大きいと指摘する。

「政策的な対応がなければ、この傾向は続きそうだ。より多くの企業が予測市場に進出するほど最大手の参入も容易になり、事業全体に、得てもいない『不可避性』の空気をまとわせることになる」と同研究所は付け加える。

そしてもちろん、スポーツ

予測市場とスポーツの結びつきはよく知られている。ある推計では、パーレイを含むスポーツ関連のデリバティブが、米国最大の予測市場の取引高の80%を占める。Roosevelt Instituteによれば、Major League Baseball(MLB)、Major League Soccer(MLS)、NHLが、少なくとも1社の予測市場事業者と契約を結ぶ北米のリーグだという。

NBAとNFLはこの点で距離を置いてきたが、リーグやチームが予測市場のスポンサー契約を受け入れているのは事実であり、それが産業に正当性を与え、通常のスポーツの話題の一部としての位置づけを固めかねない。

「これらは一度限りの取引ではなく、定例会合や継続的な情報共有といった要素を含む継続的な取り決めであるため、持続的な関係を築く。追随するリーグが増えるほど、その解消はいっそう難しくなるだろう」とRoosevelt Instituteは付け加える。

予測市場が金融・メディア・スポーツと融合する中で、すでに経路依存が生じている可能性があり、それは針路の変更を重い課題にしうる。

「経路依存がひとたび本格的に定着すれば、軌道修正は、状況と政治的意欲が重なる稀な瞬間に懸かることになる」と同研究所は結ぶ。「その頃までに、個人投資家は洗練されたマーケットメーカーに対し、あと何百万ドルを失っているのか。内部情報とみられる情報での取引から、あと何人のインサイダーが利益を得るのか」