バリー・ディラー率いるピープル(NASDAQ: PPLI)が6月1日に提示した180億ドル(約2.8兆円)規模のMGMリゾーツ・インターナショナル(NYSE: MGM)の非公開化買収提案を取り下げたことを受け、水曜日の時間外取引でMGMの株価が急落した。

ウォール・ストリート・ジャーナルが最初に報じたこのニュースは、ディラー氏やその他のMGM取締役会メンバーが、事前に公表されていなかった特別会合のため、火曜日の深夜にラスベガスへ到着したタイミングで浮上している。MGM株を26.1%保有する同メディア企業は、ベラージオの運営会社に対し1株当たり48.30ドル(約7,600円)を提示していた。同氏は同紙に対し、買収提案の断念が現実的であるとの判断に至った理由として、取引の複雑さを挙げている。

本稿執筆時点で、MGMの株価は時間外取引で8.11%下落し、34.80ドル(約5,500円)前後で推移している。翌日の株式市場がこの水準付近で引けた場合、6カ月ぶりの安値をつける見通しだ。

ディラー氏のMGM買収案につきまとった疑念

6月1日の買収提案の直後、ディラー氏の提示額が低すぎるという見方や、別の買収候補者によって引き上げられる、あるいはより有利な条件が提示されるとの観測が一部で囁かれたことを受け、MGM株は予想通り急騰した。しかし、どちらのシナリオも実現することはなかった。

カジノ大手をめぐる買収案について、必要であればディラー氏には提示額を引き上げる余地があるとの見方が広く信じられていたものの、実行に移されることはなかった。少なくとも公にはそのような動きは見られず、市場はこれを交渉が危うい状況にある兆候と解釈した可能性がある。過去1カ月間で株価は14%近く下落し、ディラー氏の提示した1株当たり48.30ドル(約7,600円)からは遠く離れた37.85ドル(約6,000円)で取引を終えている。

発表された買収が順調に進むと市場が確信している場合、買収対象企業の株価は通常、提示価格の周辺にとどまる。その傾向はシーザーズ・エンターテインメント(NASDAQ: CZR)でも見られている。同カジノ運営会社の買収に向けてティルマン・フェルティッタが支払う予定の1株当たり31ドル(約4,900円)をわずかに下回る水準で何カ月も取引が続けられている。

オプション市場では、狂騒こそないものの、権利行使価格34ドル(約5,400円)から38ドル(約6,000円)にかけてのMGMの10月物プットオプションで取引量が膨らんでおり、すでに暗雲が垂れ込めていた。プットは、トレーダーが下値リスクへの備えや弱気な賭けを行う際に購入するオプションである。

MGMとの提携に依然として含みを持たせるディラー氏

ディラー氏とMGMが今後どのような道をたどるのかは未知数であるものの、コスモポリタンの運営会社買収の断念という決定に対し、ピープルの一部の投資家からは歓迎の声が上がっているとみられる。

ディラー氏はピープルによるMGM株の保有状況について明言しなかったものの、同誌に対しては同ゲーミング企業との「戦略的取引」について「前向きであり、関心を持っている」と語っている

そのような取引がどのような形でまとまるのかは今後の判断に委ねられており、MGMがその提案に応じる姿勢を見せているのかどうかは明らかになっていない。