ゲーミング業界はAIの活用を本格的に模索しているが、規制当局と運営事業者の認識はかみ合っていないようだ。

ゲーミング企業と規制当局は、マネロン対策、サイバーセキュリティ、決済、責任あるギャンブルなど多くの論点で綱引きを繰り広げている。ネバダ大学ラスベガス校(UNLV)の新しい報告書は、AIの活用と規制が業界内の次の難題となり得ることを示した。

報告書は「The State of AI in Gaming 2026」と題され、UNLVの国際ゲーミング研究所(IGI)がKPMGと協業して作成し、今週公表された。膨大なデータは主に、各セクターと国際法域の企業および規制当局を対象とした調査で集められた。

「組織は実務でどのようにAIを導入しているのか。最大の課題はどこにあるのか。責任ある実装をどう確保するのか。将来のイノベーションを駆動する新たなAIの進展は何か。こうした問いに答えるために本報告書を作成した。年次シリーズの第1弾として読者を迎えられることを光栄に思う」と、IGIの研究ディレクターであり本報告書の編集長でもあるカスラ・ガハリアン氏は記している。

見出しとなる発見は、AIの採用と活用に関してゲーミング業界が経済全体と比べて低位にあるというものだ。研究者の「AI成熟度インデックス」における業界の総合平均スコアは、100点満点中45点止まりだった。同インデックスは4つの柱で構成され、特に突出したスコアはない。55点を超えたのは「戦略」の1柱のみ。「インフラ」と「専門性」はそれぞれ46点と47点で、「ガバナンス」は30点と最も低かった。

一部の分野では現金や従来型のテーブルゲームに依然として依存する、規制の厳しい業界としては結果自体はさほど驚きではない。意外だったのは、AIが今どのように使われ、どこへ向かうのかに関する認識の食い違いである。

企業はAI導入を急ぎすぎているか

業界セクションでは、世界の企業83社の回答を集めた。内訳はサプライヤー44社、運営事業者39社。サプライヤーは陸上型とオンラインが同数で、運営事業者は71%が陸上型だった。これに対し、規制当局からの回答は113件で、うち94件が北米と欧州からだった。

企業において、現在のAI活用で最も多かった2領域は「技術・セキュリティ」と「製品開発・イノベーション」で、両者で活用事例の約50%を占めた。最も少なかったのは「リスク・コンプライアンス」の14%だった。

研究者は2025年までの3年間にギャンブル関連会議で取り上げられたトピックの一部も評価した。大半のセッションはコンプライアンスのほか、マーケティングと顧客関係管理(CRM)に焦点を当てていた。ラスベガス・ストリップの運営事業者は、少なくとも4つの施設に影響を及ぼしたマネロン関連スキャンダルを受け、コンプライアンス体制の刷新の最中にある。

「顧客接点のAI活用が先行する小売やメディアとは異なり、ギャンブル運営事業者は規制対象の金融サービスに近い姿勢を取り、プレーヤーとの直接的な接点よりも技術、セキュリティ、製品の完全性を優先しているようだ」と研究者は記した。「これは規制上の監視と、行動環境におけるAIによるパーソナライズが抱える高い下振れリスクの双方を反映している可能性がある」

戦略とガバナンスの乖離

成熟度インデックスのスコアに立ち戻ると、研究者が「最も注目すべき発見」と明言したのが、企業のAI戦略とAIガバナンスの間にある大きな開き(27ポイント)である。業界は「それを支えるセーフガードの構築より速く、方向性を定めている」と報告書は指摘した。

AI導入に伴う最大のリスクとして、企業はサイバーセキュリティの脆弱性を挙げ、次いでデータプライバシー関連の失敗を挙げた。一方で、AIがギャンブル依存のリスクを増幅することや、プレーヤーに不公平な結果をもたらすことは最下位の回答にとどまった。

調査項目の一つによれば、AIガバナンス、責任あるAI、倫理、コンプライアンスに関する専任の役割を設けている組織はわずか22.9%だった。

「データプライバシーとガバナンスは業界のAIに関する主要懸念の一つにもかかわらず、それらに対応するガバナンス構造と専任ポストの整備は多くの組織でなお不十分であり、明確なねじれが浮き彫りになっている」と研究者は記している。

規制当局のAIリテラシーに疑問符

規制側の回答は、業界側の回答と食い違う場面も多く、近い将来のAI関連協業の下地となる可能性がある。少なくとも、こうした発見を踏まえれば関係者はそれを期待するかもしれない。

規制当局の回答113件のうち、報告書が用意したAIリテラシー14問に回答したのは68件だった。14点満点中の平均点は8.6点だったが、AIのトレーニング受講とAIリテラシーの相関は「非常に弱い」ものだった。研究者は、規制当局におけるAI活用とAIリテラシーの間に「有意な関係は見いだせなかった」と結論付けた。

この主張は、規制当局のデータセットの多くからも裏付けられるように見える。自らのAIに関する認識の把握もその一つだ。

規制当局は、AI導入に伴う倫理的リスクの特定や、AIを理由に規制更新が必要な分野の特定については最も自信があると答えた。一方で、ライセンシーがAIを自社業務でどのように使っているかを評価する能力や、ギャンブルにおけるAIシステムの使われ方を理解する能力については、最も自信がないとも答えた。一見すると直接的な矛盾と映る。

回答者の「内部の専門性が限られていることへの懸念」や「新しいAIイノベーションの速度と量への追随の難しさ」から、研究者は規制当局が「前方に立ちはだかるガバナンスの課題を認識しつつ、対応には備え不足と感じている可能性がある」と指摘した。ただし、各当局がAIのガイドラインやレビュー手続きを計画しているかを尋ねると、はいと答えたのは52%にとどまり、いいえが47%だった。

食い違う現実認識

報告書が浮き彫りにしたもう一つの大きな食い違いは、規制当局がライセンシーのAI活用を「どのように捉えているか」と、ライセンシーが「実際に何に使っているか」の隔たりだ。既述の通り、業界のAI優先順位は技術・セキュリティと製品イノベーションだった。前者は主にソフトウエア開発とサイバーセキュリティ、後者はゲーム開発とスポーツベッティング・トレーディングを指す。

しかし規制当局は、企業が最も関心を寄せているのは顧客接点の機能だと捉えており、2位との差は20ポイント超だった。「リスク・コンプライアンス」は規制当局が3番目に多く挙げた用途だが、企業は5番目(最下位)に位置付けた。企業が最上位に挙げた技術・セキュリティと製品イノベーションは、規制当局では最下位の挙げ方だった。

「規制当局が捉える業界の用途と、業界関係者が実際にAIを展開している領域との間に明確な差があることは、ギャンブル特有の規制の必要性に対する規制当局の強い合意や、業界による自主規制への懐疑の根拠そのものを問う材料となる」と研究者は記した。

規制当局による各種意見への賛同度を測る設問では、最も同意が集まったのは「AI監督の改善には州間・国家間の協調が最も有効」という主張だった。最も意見が割れたのは、自らが「より広範なAI・デジタルガバナンスの枠組みを認識しているか」だった。最も反対が多かったのは、ライセンシーの社内AI方針に関する知見と、現行規制が今のリスクと機会に対応できているかに関する設問だった。

壮大な計画、現時点では限定的なROI

業界にとって直近のAIへの期待は、業務効率化とコスト削減にあるようだ。ここ数カ月、特にサプライヤーを中心に一部のゲーミング企業が人員削減を発表している。もっとも、これらはAIに直接起因するとされたわけではない。実際、企業はこれまでにAIの取り組みから得た便益を多く報告していない。

「AIがコスト削減にどの程度寄与したかを尋ねたところ、平均回答は5点満点中2.43点だった」と報告書は記す。「回答者の多くは、AIに起因するコスト削減は最小または無と答えた。まったくないが10.8%、小幅にとどまるが48.2%だった」

先行きについて、投資への期待は割れる。26%が1〜2年後のROI顕在化を見込むのに対し、6〜12カ月後と答えたのは20%だった。さらに20%は既に有意な成果があったとし、19%はまだ判断できないと回答。有意なROIは期待できないとした回答は3.6%にとどまった。

ガバナンスと専門性の不足にもかかわらず、企業の約半数(42%)はAI関連の採用計画がないと答えた。ただし、当面の人員影響は限定的に映る。53%が、AIに伴う人員変革は組織再編を引き起こすものの「総人員数の正味変化はほとんどない」と答えた。